第23回 UZUMEの環境防災教育とキャリア教育への可能性 (藤原靖)

神奈川県立向の岡工業高校 定時制・総合学科の藤原 靖と申します.地球惑星科学(小中高校の「地学」領域)を愛する高校理科教員です.

東日本大震災をはじめとする地震災害,多発する火山噴火や気象災害をきっかけに年々防災教育に関心が集まっております.また,環境問題や資源問題といった人類共通で喫緊の社会的課題が山積みとなっております.地震,火山,気象,環境,資源さらには,その背景にある宇宙・地球と生命との歴史,宇宙探査なども扱う学問が「地球惑星科学」,小中高校の領域・科目でいうと「理科」の「地学」にあたります.

最近では,地学への関心を持っている国民が増えております.全国の高校における「地学基礎」の選択者数は平成26年度現在,前学習指導要領における「地学Ⅰ」の約4倍となり,この3年間でも年々履修率は高まっております.

本稿では,UZUMEの環境防災教育とキャリア教育への可能性についての持論を述べさせていただきます.

 

月は地球と隣の天体でありながら,宇宙規模で見ると太陽からほぼ同じ位置あるにも関わらず,環境が大きく異なります.

そのため,UZUMEでは,将来的に月の地下空間を基地にしようとしております.

月の地表は,例えば赤道域では,昼は120℃を越え,一方夜には-170 ℃にも達する,というように温度が大きく変わるところです.これは,地球には当たり前のようにある温室効果ガスを含む大気がなく,自転速度が遅いため1日が地球の27日相当となるためです.地球の洞窟では冬は温かく,夏は涼しく感じるように,月でも同様で,洞窟の中は温度差がなく安全です.

月の地表には隕石や宇宙放射線や紫外線が降り注ぎます.地球にはオゾン層を含む大気や磁場があるため,これらを防いでくれます.小さな隕石は大気との摩擦で燃え尽きてしまいます.オゾン層は光合成生物が発生させた酸素が化学反応してできたものです.

また,この地下空間は溶岩が流れてできた空洞だと考えております.できてから数十億年間,風化せずに残っていることや,今では月では火山噴火はありません.火山噴火と地震活動は同じプレートテクトニクスで説明されますが,それが現在の月にはありません.

これらの環境の違いを理解することから地球の特殊性,日本・地域は地球上でもどのような環境に存在しているのかを理解することが,地球・日本・地域の環境防災教育推進に有用だと考えます.

広義でのキャリア教育においても,これらの学びは有用であると考えています.高校で地学を学んだからこそ,社会的な課題の解決を考え,例えば工学のなかで環境改善を行いたいなど,進路を拓いていった生徒も多数見てきました.

UZUMEを推進することにより,より有用な環境防災教育,より有用なキャリア教育ができるようになること,科学技術に興味を持ち進路を切り開く生 徒たちが増えることを望み,UZUMEに携わらせていただいております.

 

(藤原靖)