第13回 放電加工面と月面のクレータ(古谷克司)

 機構系担当の豊田工業大学の古谷(ふるたに)と申します。

 本学では「難環境作業スマート機械技術研究センター」が設置されており、そのメンバーとしても活動しています。真空、高温などの物理的に活動が困難な環境や、状況を判断するための情報を得ることが難しい環境で活動する機械を作ることが目的です。UZUMEで活動する環境は、ほぼ真空であり、孔への降下時に状況判断するための情報を事前に得ることが困難である点で、まさに難環境です。

 ところで、専門はものづくりの技術である精密加工とメカトロニクスです。

 精密加工は、正確に形を造るために、素材を切ったり、削ったり、ひっつけたり、変形させたり・・・といろいろな方法で行われます。それらの中で、放電加工と呼ばれる油や水の中で電気の火花を飛ばしながら加工する方法についても研究しています。放電の温度は7千度程度とも言われており、その時の熱で金属材料が沸騰、蒸発して少しずつ(小さいときはマイクロメートル(1/1000ミリメートル)程度以下で)除去されていきます。

 このコラムの読者の皆さんもご存じのように、月にはクレータと呼ばれる凹凸があります。放電加工された表面を電子顕微鏡で見ると、なんとこれが、月面の写真とも見えなくもない(月の専門家にとっては別物かもしれませんが)凹凸があります。この凹凸は放電加工の分野でもクレータと呼ばれます。さらに、「縦孔」とおぼしき孔も観察されるときがあります。放電加工面では、表面と内側との冷え方の違いで表面や内部にクラックが入ることがあります。その断面は、第11回コラムで山田竜也さんが書かれた縦孔のジオラマのようなときもあります(ただし、基地があったり、カナブンがいたりはしませんが)。

 大きさは1000万倍くらい違い、形成過程も異なりますが、いろいろと共通することが見つかればおもしろいのではないかと思っています。

「う」 宇宙の不思議はどこにある。
「ず」 頭上に見える月にある。
「め」 目指そう!みんなで縦孔を。

(古谷克司)